昨年1年間に懲戒処分を受けた千葉県警職員は35人(前年比24人増)に上り、47都道府県警(計276人)で最多だった。捜査4課の元警部による複数の性的暴行事件や飲酒運転などが相次いだ。有識者は「職業倫理やプロ意識を育てつつ、外部の目を入れて組織改革に切り込む必要がある」と指摘する。
警察庁によると、千葉県警の懲戒処分は免職4人、停職5人、減給10人、戒告16人の計35人だった。次いで、警視庁が31人、大阪府警が18人。県警監察官室は全国最多の処分者数について「コメントは差し控える」とした。
主な事案は、懲戒免職になった捜査4課元警部の岡田誠被告(45)=強制性交等罪などで起訴=。2022年8月、千葉市中央区の駅構内で女性のスカート内をスマートフォンで撮影したとして、県迷惑防止条例違反(盗撮)容疑で現行犯逮捕された。
その後、県内の複数の性的暴行事件で採取されたDNA型と岡田被告のDNA型が一致した。県警は6~9年前の強制性交等や強姦(ごうかん)などの疑いで、今年2月までにさらに5回逮捕している。いずれも夜に女性方に侵入し、刃物で脅す悪質な手口だった。勤務時間外の犯行で、職務で知り得た情報を使った形跡は確認されていないという。
岡田被告の逮捕は県警内に衝撃を与えた。被告を知る職員は「まさかそんな人だとは思わなかった」と絶句した。ある捜査幹部は「言語道断で本当に許せない。被害者や県民に申し訳ない」と肩を落とした。
飲酒運転を取り締まる立場の警察官が逮捕されたケースもあった。
八街市で21年6月、飲酒運転のトラックが下校中の小学生の列に突っ込み、5人が死傷する事故を受け、県は飲酒運転根絶条例を制定し、県警はアクションプランを策定するなど対策に取り組んできた。
ところが、千葉北署で飲酒運転を取り締まる自動車警ら係だった元巡査の男(54)=懲戒免職、罰金50万円の略式命令=は昨年11月、道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで現行犯逮捕された。夜間に対向車線の乗用車と衝突する事故を起こし、基準値以上のアルコールが検知された。
県警は不祥事の度に「再発防止に努めて参ります」とコメントした。だが、不祥事は続いた。複数の職員によると、飲酒を伴う会食を制限したという。
同志社大の太田肇教授(組織論)は「再発防止策が綱紀粛正など一過性でワンパターンなものになっていないか」と疑問視する。閉鎖的な階級組織での管理強化は、むしろ職員の意識をより内向きにする恐れもあるという。
太田教授は「強制捜査の権限を持つ警察は公務員の中でも特に透明性が求められる」とも話す。(上保晃平)
昨年発表された県警の主な懲戒処分
2月 火災現場から現金を盗んだ鑑識課巡査部長を免職
3月 暴力団幹部に家宅捜索の情報を漏らした捜査4課警部補を戒告
9月 県警察学校でトランプ賭博をした巡査14人を減給など
10月 大麻所持の第1機動隊巡査を免職
11月 性的暴行などで捜査4課警部を免職
12月 女性へのストーカーで交通捜査課職員を停職6カ月
部下に銃口を向けた機動捜査隊巡査部長を停職3カ月
酒気帯び運転で千葉北署員を免職
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昨年1年間の懲戒処分数(多い順、カッコ内は全職員数)
千葉県警 35人(約1万2千人)
警視庁 31人(約5万人)
大阪府警 18人(約2万3千人)
愛知県警 14人(約1万5千人)
埼玉県警 13人(約1万3千人)
神奈川県警 13人(約1万7千人)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル